現代サッカー 守備的戦術の傾向

サッカー戦術

これまでのサッカーでは攻撃的なチームがアクション側、守備的なチームがリアクション側とみなされてきました。

また、サッカーにおける最大の喜びを感じるシーンはゴールが決まる瞬間であることから、これまで多くのチームが「いかにして相手の陣形を崩し、ゴールを奪うか?」という観点から戦術を考案・構築してきました。しかし昨今では「陣形を崩す」ではなく、「陣形が整う前にゴールへ迫る」がトレンドになってきており、それを実現するために研究が進んだのは、攻撃よりむしろ守備面の戦術でした。

まず大きなターニングポイントとなったのは、ユルゲン・クロップがボルシア・ドルトムント時代に披露した、前線でボールを失った瞬間に人数をかけて相手ボールホルダーに襲いかかる『ゲーゲン・プレッシング』の登場でした。この戦術の登場で攻撃と守備のシームレス化が進み、同時に個人同士の競り合い、局面戦術の進化も必要とされ始めました。

そこで登場したのが、マウリツィオ・サッリがセリエAのナポリで体現した、『トータル・ゾーン』と呼ばれる戦術でした。これまでは11人全員での連動が絶対とされてきたゾーンディフェンスを、『個人による局面戦術の集合体』として定義することで球際のバトルの激しさをより加速させ、『守備側からアクションを起こす』ことすら可能としたのです。

『守備的サッカー=リアクションで退屈』という価値観はいつか通用しなくなり、むしろ『創造的でダイナミック』と価値観になる時代も、そう遠くはないでしょう。